2008(平成20)年度実証試験状況について

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IGCC(石炭ガス化複合発電)

 平成20年3月に250MW定格出力運転を達成し、6月10日からは、IGCC(石炭ガス化複合発電)開発の最大の山場と考えておりました長時間連続運転へのチャレンジを開始し、9月17日に、累積連続運転2039時間を達成することができました。これは、所期の目的であった「電力の需要の高い夏場において、3ヶ月ノンストップで連続運転できる信頼性」を立証できた事を意味するものであり、IGCCの商用化に向けて大きく前進したものと考えております。

2000時間連続運転達成の瞬間

【石炭ガス化調整試験(RUN-7)】

  • <試験目的>
  • ・負荷変化試験を実施し、設備の追従性、制御性を確認する。
  • ・性能試験を実施し、プラント効率、環境特性を確認する。
  • <試験結果>
  • ・負荷上昇、負荷降下を安定して行うことを確認することができた。
  • ・SOx、NOx、ばいじん濃度、排ガス量の環境目標値をクリアした。

【健全性確認試験(RUN-8)】

  • <試験目的>
  • ・2000時間連続運転試験(RUN-9)前に実施した設備改造箇所の健全性を確認する。
  • <試験結果>
  • ・改造箇所の健全性と、プラント安定運転を確認することができた。

【2000時間連続運転試験および運転最適化試験(1)(RUN-9)】

  • <試験目的>
  • ・2000時間連続運転を確認する。
  • ・プラント効率向上、運用性向上のための確認試験を実施する。
  • <試験結果>
  • ・累積連続運転2039時間の運転で設備の信頼性を確認することができた。
  • ・運転最適化試験(2)に向けた基礎データを取得することができた。

【運転最適化試験(2)および炭種変化試験(RUN-10)】

  • <試験目的>
  • ・プラント効率向上、運用性向上のための確認試験を実施し、プラント効率を確認する。
  • ・設計炭以外の石炭による運転を確認する。
  • <試験結果>
  • ・目標送電端効率(LHV)42%以上を確認した。また設計炭以外の石炭による運転が可能であることを確認することができた。

 平成19年9月20日のガス化炉点火によりIGCC実証機の建設工事が終了し、実証試験を開始しました。

 平成19年12月上旬に石炭ガスをガスタービンに初めて投入いたしました。以後12月下旬にプラント負荷50%到達、平成20年1月上旬にプラント負荷75%到達と順調に試験は進捗し、3月7日には、プラント負荷100%(250MW)到達となりました(下記・写真)。

080401
 平成19年度における各主要設備の運転状況は以下のとおりです。

(1) ガス化炉設備

【9月】 9月20日のガス化炉点火以降、ガス化炉への石炭投入に先立ち、石炭ガス化反応に必要な温度まで灯油にてガス化炉の温度を上昇させる必要があることから、灯油を燃焼した状態でガス化炉を昇温・昇圧し、灯油燃焼ガスでの安定運転を確認しました。
【10月】 ガス化炉燃料の灯油から石炭への切替試験を実施し、ガス化炉の運転状態およびスラグの排出性が計画通りであることを確認しました。
【11月】 ガス化炉運転の制御性の確認を実施しました。
【12月~3月】 石炭ガスの圧力制御を実施し良好な制御性を確認しました。
また、ガス化炉とガスタービンの協調制御運転を行い、安定した運転ができることを確認しました。

(2) ガス精製設備

【9月】 ガス化炉にて発生した灯油ガスの通ガスを実施しました。
【10月】 中旬より石炭ガスの通ガスを開始しました。また、下旬よりアミン(ガス精製用の薬液)再生を開始しました。
【11月】 石炭ガスから回収した硫黄分を燃焼させるオフガス燃焼炉運転の燃焼状態の確認、その後硫黄回収設備調整運転を実施し、良好な運転結果を得ました。
【12月~3月】 各負荷において、石炭ガス系統が安定して運転できることを確認しました。

(3) 複合発電設備

【9月】 ガスタービン25%負荷(灯油焚き)での総合インターロック試験を実施しました。
【10月】 負荷運転調整を行いました。
【11月】 中旬にタービンの急速停止を実施し、良好な試験結果を得ました。また、下旬に石炭ガス投入に向けた燃料ガス管パージ(ガスタービンに石炭ガスを投入する前に燃料配管内の空気を窒素で置換すること)確認を実施しました。
【12月~3月】 ガスタービンの燃料切替(灯油⇔石炭ガス)が問題なく実施できることを確認するとともに、各負荷において燃焼状態の調整を行い、良好な燃焼性を得ました。蒸気タービンについても、ガスタービン燃料切替や負荷変動による主蒸気温度への影響は緩やかであり、問題なく運転できることを確認しました。
また、石炭ガス焚き時の総合インターロック試験を実施し、各設備が安全に停止できることを確認しました。

IGCCプロジェクトは、現在、世界各国でも積極的に進められています。

IGCC先行機

プロジェクト名
運営会社
(国)
ガス化炉
(方式)
GT 発電端出力
(MW)
運転開始
年月
連続運転
(時間)※
備 考
Buggenum
Nuon(Vattenfall)
(オランダ)
Shell
(酸素吹き)
Siemens
V94.2
284 1994年1月 3,287
Wabash River
Wabash Valley Power
(米国(インディアナ州))
E-Gas(Dow)
(酸素吹き)
GE
7FA
296 1995年8月 1,848
Polk Power
Tampa Electric
(米国(フロリダ州))
GE(Texaco)
(酸素吹き)
GE
7FA
315 1996年7月 1,673
Puertollano
ELCOGAS
(スペイン)
Prenflo
(酸素吹き)
Siemens
V94.3
318 1997年11月 954
IGCC実証機
クリーンコールパワー研究所
(日本(福島県))
MHI
(空気吹き)
MHI
701DA
250 2013年7月 3,917 2013年4月
常磐共同火力10号機として商用転用

※ ガス化ガス運転時間のみ

発表論文

Progress in Japanese Air-blown IGCC Demonstration Project Update (PDF 2MB)
浅野哲司,Coal Gasification Sympsium,平成24年4月26日

Brief Introduction on Nakoso IGCC Demonstration plant Technology and its test results (PDF 878KB)
渡辺勉,インド2012年エネルギー会議,平成24年1月23日

日本的250MW空气吹入IGCC实证项目的进展情况 (PDF 1.3MB)
石橋喜孝ほか,クリーン高効率石炭火力技術2011年会,平成23年10月13日

Clean Coal Demonstration Plant Of 250MW Air-Blown IGCC in Japan (PDF 1.5MB)
T.watanabe et al., GAP&Coal Chemicals Conference,China Beijing, June 8, 2011

Results and estimations of the 5,000 Hour Durability Test at the Nakoso Air Blown IGCC plant (including other activities) (PDF 908KB)
T.watanabe et al., Gasification Technologies Conference 2010, Washington, D.C,November 3, 2010

Japanese Air Blown IGCC Project Progress (PDF 848KB)
T.watanabe et al., IGCC Outlook china 2010, Shanghai, April 15, 2010

Clean coal technology required for the future and development of IGCC technology.  (PDF 1.16MB)
T.watanabe et al., International Electric Research Exchange ,Romania, November 10, 2009

Second Year Operation Results of CCP’s Nakoso 250MW Air-blown IGCC Demonstration Plant (PDF 387KB)
Y.Ishibashi et al., Gasification Technologes Council 2009,Cororado,Oct.2009

「石炭ガス化複合発電(IGCC)の開発について」 (PDF 2.39MB)
(社)日本ガスタービン学会 第37回ガスタービンセミナー 2009.1

「石炭ガス化複合発電(IGCC)実証プラントの開発」 (PDF 8.69MB)
(社)日本ガスタービン学会誌 Vol37 No2 2009.3

Project Status of 250MW Air-blown IGCC Demonstration Plant (PDF 209KB)
S.Kaneko et al., Gasification Technology 2001, San Francisco, Oct. 2001

ガス化複合サイクル発電 (PDF 209KB)
橋ほか, 火力原子力発電, vol.52, No.541(2001)

技術資料

石炭ガス化複合発電(IGCC)実証プラント開発の動向 (PDF 334KB)
CCP研究所2001年7月,CCP研究所

資源・エネルギー技術評価検討会

噴流床石炭ガス化発電プラント実証」プロジェクト評価(中間)報告書 (PDF 3.04MB)
産業構造審議会産業技術分科会 評価小委員会,2008年4月

「噴流床石炭ガス化発電プラント実証」評価用資料 (PDF 1.43MB)
経済産業省資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 電力基盤整備課,2008年1月

「噴流床石炭ガス化発電プラント実証」に関する評価報告書 (PDF 127KB)
資源・エネルギー技術評価検討会,2000年7月

「噴流床石炭ガス化発電プラント実証」説明資料 (PDF 500KB)
通商産業省 資源エネルギー庁公益事業部 電力技術課,2000年3月

実証試験結果(詳細):平成22年度まで

1) システムの安定性:「石炭ガス化調整試験」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
・プラント異常時における安全停止

インターロック試験を実施し、プラントが安全に停止することを確認


実施時期:2007(H19)年度
状況   :完了

  • ・プラント異常を模擬して安全に停止することをインターロック試験により確認
  • <試験項目(抜粋)>
  • ・灯油炊き時の総合インターロック試験
  • ・石炭ガス焚き時の総合インターロック試験
システムの安定性を確認目標達成
・石炭ガスの安全なハンドリング

プラント運転状態の確認や調整を行うことで、石炭ガスの安全なハンドリングと定格負荷での安定運転を確認


実施時期:2007(H19)年度
状況   :完了

  • ・各種試験や調整を行うことで、石炭ガスの安全なハンドリングと運転状態に異常が無いことを確認
  • ・定格負荷250MWにおける継続的な安定運転によるシステムの安定性を確認
  • <試験項目(抜粋)>
  • ガス化炉
  • ・ガス化炉燃料切替試験(灯油→石炭)
  • ・ガス化炉運転制御性確認
  • ・ガス化炉とガスタービンの協調制御運転
  • ガス精製設備
  • ・灯油ガス/石炭ガスの通ガス確認
  • ・オフガス燃焼炉運転確認
  • ・硫黄回収設備調整運転
  • 複合発電設備
  • ・タービン急速停止
  • ・燃料ガス管パージ確認
  • ・ガスタービン燃料切替(灯油→石炭ガス)
  • ・ガスタービン燃焼調整
  • ・蒸気タービン運転状態確認

2) 設備の信頼性:「2000時間連続運転試験」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
・2000時間の連続運転
(夏季3ヶ月間相当)

2000時間連続運転を実施


実施時期:2008(H20)年度
状況   :完了

  • ・平成20年6月10日~9月17日の間で2000時間連続運転 試験を実施
  • ・途中ASUのバルブ損傷に伴いプラントを停止したが、バルブ修理後プラントを速やかに起動して累積連続運転2039時間を確認し、その後点検のためプラントを計画停止
連続運転の目標は達成したが、今後も継続して中長期的な耐久性等の検証をしていく目標達成

3) 炭種適合性:「炭種変化試験」「炭種適合性拡大試験」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
・設計炭以外の複数の炭種を用いた運転とデータ取得

亜瀝青炭(北米炭、インドネシア炭A)を用いた運転状態を確認


実施時期:2008(H20)年度
状況   :完了

  • ・部分負荷ではあったが、運転パラメータの調整を実施することで亜瀝青炭2炭種(北米炭、インドネシア炭A)を専焼できることを確認し、運転状態のプラント特性データを取得
  • ・炭種性状によりガス化炉後流にある熱交換器伝熱管に詰まりが発生する場合有り

設計炭以外の3炭種の運転状況を分析し、商用機設計に資するデータを取得

ガス化炉後流熱交換器(SGC)伝熱管に詰まりが発生する場合がある

炭種性状に応じてトラブルの発生防止など様々な対応が必要なことが判明

目標達成

亜瀝青炭(北米炭)を用いた運転状態を確認


実施時期:2009(H21)年度
状況   :完了

  • ・運転パラメータを変更し、再調整を行うことで亜瀝青炭(北米炭)を用いたプラント運転状態を確認
  • ・炭種性状によりガス化炉後流にある熱交換器伝熱管に詰まりが発生する場合有り

設計炭以外の主力炭種拡大や専焼可能な亜瀝青炭拡大を目的とした運転を実施


実施時期:2010(H22)年度
状況   :完了

  • ・運転パラメータを変更し、再調整を行うことで亜瀝青炭(インドネシア炭B)を用いたプラント運転状態を確認

4) 高効率性:「運転最適化試験」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・目標熱効率
    (送電端効率:LHV42%)の達成

効率検証、ならびに商用機にて効率向上が期待可能な項目を検証


実施時期:2008(H20)年度
状況   :完了

運転パラメーターを調整することにより送電端効率目標42%(LHV)に対して42.9%(LHV)を確認 高効率性を確認目標達成

5) 耐久性:「耐久性確認試験」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・長時間運転とその後の開放点検

延べ5000時間運転を実施し、その後の開放点検を行うことにより耐久性を評価


実施時期:2009(H21)年度
2010(H22)年度
状況   :完了

  • ・年間で延べ5000時間運転到達
  • ・5000時間耐久性確認試験後の設備点検をしたところ、大規模な設備改造を要する様な致命的な機器損傷は無く、実証設備のIGCC構成が妥当であることを確認
実証設備のIGCC構成が妥当であることを確認したが、今後も継続して中長期的な耐久性等の検証をしていく 目標達成

6) 経済性:「経済性評価」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・運転実績に基づく経済性の評価

運転実績に基づいて、商用機における建設費・運転費・保守費等を総合的に評価し、経済性を評価


実施時期:2010(H22)年度
状況   :完了

  • ・建設費や修繕費は微粉炭火力よりも高いと想定されるが、熱効率の向上や燃料調達費の低減が見込まれる
発電原価として微粉炭火力と同等以下となる見通しは得られる可能性あり。但し修繕費については、コスト低減に向けて今後の精度向上が望まれる目標達成

実証試験結果(詳細):平成23年度以降

1) 信頼性

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・試験中に実施した対策についての中長期的な耐久性などの検証

既に実施の設備トラブル対策について耐久など長期的な検証を行う
更に運転をすることで中長期的に発生しうる設備トラブルの未然防止をはかるため設備点検や経年劣化評価を行う


実施時期:2011(H23)年度
状況   :完了

  • ・初期トラブルについては運転試験や定検工事、休転工事において対策箇所の確認を実施。SGC差圧上昇やHRSG発錆以外は現在まで大きな問題なし
  • ・中長期的に発生したトラブルとして平成23年度は2件の対策を実施。今度対策箇所の検証を実施予定
・初期トラブル対策について、中長期的な耐久性などの検証を行い、ほぼ問題ないことを確認
・新たに発生したトラブルについても、設備トラブル対策の検証を実施目標達成

さらに運転実績を重ねて中長期的な耐久性の検証を行う


実施時期:2012(H24)年度
状況   :完了

  • ・初期トラブルについては昨年度同様に運転試験や休転工事において対策箇所の確認を実施。高頻度作動弁の損傷が確認されたが、材質変更を行い、運転試験を通じて耐久性の確認を実施。その他は特に大きな問題なし。
  • ・中長期的に発生した新たなトラブルとして平成24年度は2件の対策を実施。年度末点検にて対策箇所の検証を実施。

2) 炭種適合性

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・炭種性状に応じたトラブル発生防止方策の確立

瀝青炭(コロンビア炭、ロシア炭、インドネシア炭)を用いた運転状態を確認


実施時期:2011(H23)年度
状況   :完了

  • ・運転パラメータを変更し、再調整を行うことで瀝青炭(コロンビア炭、ロシア炭、インドネシア炭)を用いたプラント運転状態を確認
  • ・炭種性状によりガス化炉後流にある熱交換器伝熱管に詰まりが発生する場合有り
・設計炭以外の5炭種について、運転パラメータ調整による運転状態を確認し、炭種ごとの運転最適化を図った
・熱交換器伝熱管詰まりについては設備面や運用面での対応による対策の効果を確認した 目標達成

亜瀝青炭(米国炭)や瀝青炭(カナダ炭)を用いた運転状態を確認


実施時期:2012(H24)年度
状況   :完了

  • ・運転パラメータを変更し、再調整を行うことで亜瀝青炭(米国炭)、瀝青炭(カナダ炭)を用いたプラント運転状態を確認
  • ・ガス化炉後流の熱交換器伝熱管詰まりは、伝熱管の一部改造による設備面での対応や高圧除煤装置等の運用面での対応により、SGC伝熱管詰まり対策の効果を確認した

3) 経済性

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・設備点検のサンプル数を増加させつつ、微粉炭火力並みのコスト実現に向けての検討

運転実績・点検実績に基づいて、商用機における建設費・運転費・保守費等を低減させるための検討を行う


実施時期:2011(H23)年度
状況   :完了

  • ・ガス化炉後流にある熱交換器の容積低減を図る方策を検討
  • ・点検周期の延伸化について見直しを検討
・熱交換器容積低減方策が問題ないことを確認し、設備の容積低減が可能となる見通しを得た
・設備点検、運転試験、設備トラブルを通じて、点検周期や点検範囲の精度向上を図った 目標達成

さらに運転実績・点検実績を重ねて費用低減に関する検討を行う


実施時期:2012(H24)年度
状況   :完了

  • ・ガス化炉後流にある熱交換器の容積低減方策を一部実施し、伝熱性能に問題ないことを確認
  • ・点検周期の延伸化について引き続き見直しを検討

実証試験内容と試験結果(概要)

 IGCC実証試験は、ガス化炉に点火した2007(H19)年9月から2011(H23)年3月までの約3年7ヶ月にわたり、下表のスケジュールで実施し、当初目標としていた指標を概ね達成することができました。

 また今後は、2011(H23)年度から2012(H24)年度末までの2年間、新たな課題への対応とIGCC技術の成熟化に向けて、主として信頼性、経済性、炭種適合性に関する検証試験をさらに進め、円滑な商用化へつなげていく計画です。

実証試験スケジュール

実証試験スケジュール

実証試験の検証項目と内容(平成22年度まで)

検証項目 内 容
1) システムの安定性 プラント異常時において安全に停止できること、また石炭ガスを安全にハンドリングできることを検証する。
2) 設備の信頼性 信頼性確認のため最低2000時間の連続運転(夏季3ヶ月間相当)を行う。
3) 炭種適合性 設計炭以外にも複数の炭種を用いて運転を行い、将来の商用機設計に資する特性データを取得する。
4) 高効率性 目標熱効率の達成により、IGCCの最大の特徴である高効率性を検証する。
5) 耐久性 長時間運転と開放点検により、設備の耐久性を検証する。
6) 経済性 運転実績に基づいて、商用機における建設費・運転費・保守費等を総合的に評価し、経済性を評価する。

1) システムの安定性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・プラント異常時における安全停止
  • ・プラント異常を模擬して安全に停止することをインターロック試験により確認
システムの安定性を確認目標達成
  • ・石炭ガスの安全なハンドリング
  • ・各種試験や調整を行うことで石炭ガスの安全なハンドリングと運転状態に異常が無いことを確認
  • ・定格負荷250MWにおける継続的な安定運転によるシステムの安定性を確認

2) 設備の信頼性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・2000時間の連続運転
    (夏季3ヶ月間相当)
  • ・累積連続運転2039時間を確認
連続運転の目標は達成したが、今後も継続して中長期的な耐久性等の検証をしていく目標達成

3) 炭種適合性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・設計炭以外の複数の炭種を用いた運転とデータ取得
  • ・亜瀝青炭3炭種を用いプラント運転を実施し運転データを取得
  • ・炭種性状によりガス化炉後流にある熱交換器伝熱管に詰まりが発生する場合有り
設計炭以外の3炭種の運転状況を分析し、商用機設計に資するデータを取得
ガス化炉後流熱交換器(SGC)伝熱管に詰まりが発生する場合がある
炭種性状に応じてトラブルの発生防止など様々な対応が必要なことが判明目標達成

4) 高効率性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・目標熱効率
    (送電端効率:LHV42%)の達成
  • ・送電端効率42.9%(LHV)を確認
高効率性を確認目標達成

5) 耐久性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・長時間運転とその後の開放点検による評価
  • ・年間で延べ5000時間運転到達
  • ・5000時間運転後の開放点検を行い致命的な機器損傷なし
実証設備のIGCC構成が妥当であることを確認したが、今後も継続して中長期的な耐久性等の検証をしていく目標達成

6) 経済性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・運転実績に基づく経済性の評価
  • ・建設費や修繕費は微粉炭火力よりも高いと想定されるが、熱効率の向上や燃料調達費の低減が見込まれる
発電原価として微粉炭火力と同等以下となる見通しは得られる可能性あり。但し修繕費については、コスト低減に向けて今後の精度向上が望まれる目標達成

詳しい試験結果は、実証試験の詳細へ

実証試験の新たな検証項目と内容

1) 信頼性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・試験中に実施した対策についての中長期的な耐久性などの検証プラント異常時における安全停止
  • ・初期トラブルについては運転試験や工事中に対策箇所の確認を実施。SGC差圧上昇やHRSG発錆以外は現在まで大きな問題なし
  • ・中長期的に発生したトラブルとして平成23年度は2件の対策を実施。今度対策箇所の検証を実施予定
  • ・初期トラブル対策について、中長期的な耐久性などの検証を行い、ほぼ問題ないことを確認
  • ・新たに発生したトラブルについても、設備トラブル対策の検証を実施

目標達成

  • ・初期トラブルについてはさらに運転試験や休転工事を通じて中長期的な耐久性の検証を実施。ほぼ問題ないことを確認した
  • ・中長期的に発生した新たなトラブルとして平成24年度は2件の対策を実施。年度末点検にて対策箇所の検証を実施

2) 炭種適合性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・炭種性状に応じたトラブル発生防止方策の確立
  • ・瀝青炭(コロンビア炭、ロシア炭、インドネシア炭)を用いたプラント運転状態を確認
  • ・炭種性状によりガス化炉後流にある熱交換器伝熱管に詰まりが発生する場合有り
  • ・設計炭以外の5炭種について、運転パラメータ調整による運転状態を確認し、炭種ごとの運転最適化を図った
  • ・熱交換器伝熱管詰まりについては設備面や運用面での対応により対策の効果を確認した

目標達成

  • ・亜瀝青炭(米国炭)、瀝青炭(カナダ炭)を用いたプラント運転状態を確認
  • ・ガス化炉後流にある熱交換器伝熱管詰まりについては、設備面や運用面での対応により対策の効果を確認した

3) 経済性

検証内容(概要) 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・設備点検のサンプル数を増加させつつ、微粉炭火力並みのコスト実現に向けての検討
  • ・ガス化炉後流にある熱交換器の容積低減を図る方策を検討
  • ・点検周期の延伸化について見直しを検討
  • ・熱交換器容積低減方策が問題ないことを確認し、設備の容積低減が可能となる見通しを得た
  • ・設備点検、運転試験、設備トラブルを通じて、点検周期や点検範囲の精度向上を図った

目標達成

  • ・ガス化炉後流にある熱交換器の容積低減方策を一部実施し、問題ないことを確認
  • ・点検周期の延伸化について見直しを検討

IGCC(石炭ガス化複合発電)研究開発の経緯

実証機プロジェクトスケジュール

パイロットプラント試験 FS 要素研究 事前検証試験 設計研究

パイロットプラント試験

1.勿来パイロットプラント試験の概要

 1986(S61)年度に、電力9社、電源開発および電力中央研究所が共同して「石炭ガス化複合発電技術研究組合(IGC組合)」を設立し、国からの補助を受けて勿来パイロットプラントプロジェクトがスタートしました。1991(H3)年6月からガス化試験を開始しましたが、当初は、ガス化炉に溶融した石炭灰が付着・成長してガス化炉を閉塞させるスラッギングが多発し、ガス化炉の長時間安定運転ができませんでした。そこで、1994(H6)年度にガス化炉の抜本的な改造を実施し、以降順調な運転が可能になり、連続運転789時間を達成。1996(H8)年2月に成功裏に運転を終了しました。

勿来パイロットプラント

勿来パイロットプラント

主な仕様

規模:
石炭200t/日(電気出力2.5万kW相当)
方式:
ガス化炉-噴流床空気吹き
ガス精製-乾式流動床脱硫
体制:
国→NEDO→IGC組合
場所:
常磐共同火力勿来発電所構内

パイロットプラント運転実績(累計時間)

パイロットプラント運転実績(累計時間)

2.パイロットプラント運転実績

パイロットプラント運転実績

3.パイロットプラント運転試験結果

システム検証 ガス化炉、ガス精製、ガスタービン一体の空気吹きガス化システムとして基本技術の成立性を確認
IGCCシステムとして各種のクリティカル条件(燃料発熱量等)を把握
スラッギング現象等要素試験では把握できない石炭ガス化炉特有の事象を確認
スケールアップ
データの取得
ガス化炉およびガス精製の適正なスケールアップ方法を把握
スケールアップに際しては、可能な限り多くの要因に対する事前検証が重要
熱効率 各設備ともに初期の目標値を達成
微粉炭火力に比べて所内動力が大きく、一層の所内動力の削減が必要
試験結果に基づく概念設計では、1,300℃級先進型ガスタービンを用いた場合には、送電端効率43%超を確認
経済性 微粉炭火力より若干割高になる見込みであり、建設費の一層の削減検討が必要
環境適合性 運転試験結果からSOx、NOx、ばいじんについては、各々煙突出口で20ppm、20ppm、1mg/m3N以下の見通しが得られた
炭種適合性 3炭種の運転試験結果から、酸素富化および融点降下剤(石灰石)の添加を行えばワークワース/モーラ炭程度の性状の石炭は運転可能であることを確認
運用特性 運転試験結果および概念設計検討結果より、冷態起動時間は、約1日程度
負荷追従性は微粉炭火力並み以上の達成の見込み
信頼性 累積運転時間4700時間の実績を得たが、長期運転信頼性の検証については、実証機の課題
個別機器の選定材料等については、数年程度の耐久性に関しての知見が得られた

FS

FS(Feasibility Study)編

 1997(H9)年度には、IGCCの各方式(ドライフィード/スラリーフィード給炭、酸素吹き/空気吹きガス化、乾式/湿式ガス精製)について、信頼性・熱効率・環境特性・経済性等の観点から総合評価を行い、わが国で開発を進めるべき実証機方式を選定しました。

 その結果、勿来パイロットプラントで試験を実施したドライフィード酸素富化空気吹きガス化炉に、湿式ガス精製方式を組み合わせた方式が実証機として最適であるとの結論を得ました。

 1998(H10)年度には、上記で選定したIGCC方式を対象として、機器仕様の検討・設計パラメータ変化時の影響・商用機の試設計等を実施しました。

主な検討項目

1)低炭化度炭の使用に関する検討
2)石炭の粉体供給方式の比較検討
3)H2S吸収液のCO2選択性がシステムに与える影響
4)空気分離装置の酸素純度がシステムに与える影響
5)1500℃級ガスタービンによるIGCC商用機プラントの試設計

要素研究

要素研究編

 1997(H9)年度~1998(H10)年度にわたり、パイロットプラントで残された課題を解決するため、「石炭供給の安定化」、「ガス化炉の大型化」、「ガス精製設備の信頼性向上」、「ガスタービン設備」の4分野について、試験設備を使用した個別機器毎の要素研究を実施しました。

1)石炭供給の安定化

 窒素による微粉炭の高濃度搬送試験を行い、石炭の安定供給方法についての知見や実証機へ適用できる見込みを得ることができました。

2)ガス化炉の大型化

 24t/日規模のガス化炉試験設備を用いて、ガス化炉の大型化の予測・評価試験を実施しました。この結果、性能予測シミュレーションとほぼ合致する試験結果が得られ、信頼性の高い実証機の性能予測を得ることができました。

3)ガス精製装置の信頼性向上

 石炭ガス中にはCOS(硫化カルボニル)が含まれており、これをH2Sへ転換させるための触媒の性能および耐久性を確認するための試験や高濃度SO2に対する石灰石膏法の脱硫性能確認試験、石炭ガス中に含まれる微量不純物の除去性能の確認試験等を実施しました。

 この結果、触媒に関しては実証機で適用可能な見通しが得られ、脱硫性能試験では極めて高い脱硫効率が得られました。また不純物除去性能試験では、アンモニア等の不純物の除去が可能であることを確認しました。

4)ガスタービン設備の信頼性向上

 ガスタービンの翼に付着するデポジットの付着特性や耐腐食コーティングの性能評価に関る研究を行い、デポジット付着メカニズムを解明することができたほか、実証機用ガスタービン翼に有効なコーティング方法を確立することができました。

事前検証試験

事前検証試験編

 1999(H11)~2001(H13)年度において、実証機の信頼性向上を目的とし、実証機の本格設計の前段階として実施している設計研究をベースに、「ガス化炉」、「ガス精製」、「ガスタービン」の各機器について信頼性検証試験を行いました。

1)ガス化炉構成機器の信頼性検証試験

 24t/日石炭ガス化炉試験設備を用いて、ガス化試験を実施し、各部品の磨耗等を調査した結果、磨耗、焼損や動作不良等の異常は認められませんでした。この結果、現在計画している材料や部品の仕様について、信頼性が確保されていることを確認しました。

 また実証機候補炭による酸素濃度変化試験および炭種変化試験を実施し、炭種毎のガス化特性を把握することができました。

 さらに高温ガスフィルタ評価試験の実施で、フィルタ毎の差圧特性・集塵特性を把握し、機種選定の一助となるデータを取得できました。

 その他、実証機と同スケールの機器(大型粉体弁、高圧除煤装置)を使用して、実機の動作環境を模擬した条件下で作動試験を実施し、機器の信頼性を確認しました。

2)ガス精製構成機器の信頼性検証試験

 湿式ガス精製プロセスにおいて、石炭ガス中のHCl、NH3から生成されるNH4Cl(塩化アンモニウム)の析出・昇華挙動を調査し、NH4Clの析出特性を把握することができました。

 また石炭ガス中のH2Sを吸収する溶液(MDEA溶液)の劣化挙動を把握するため、基礎試験装置を用いて模擬ガスによる吸収劣化試験を実施し、吸収液の劣化特性を評価することができました。

 その他、H2S燃焼炉の切替バルブ(実証機と同スケール)の耐久性試験や、実石炭ガス発生器を有した湿式ガス精製一貫設備を用いた石炭ガス中の不純物除去性能の確認試験、石炭ガスの熱交換器(GGH)における塩化アンモニウム付着対策試験を実施し、機器の信頼性を確認しました。

3)ガスタービン構成機器の信頼性検証試験

 ガスタービン翼のデポジット付着特性、およびコーティング材の腐食成分侵入現象を解明するための研究を実施しました。

 デポジット付着特性については、実際の付着物組成と凝縮組成計算コードから求めた付着物組成がほぼ合致する結果が得られ、凝縮組成計算コードの信頼性が確認できました。

 またコーティング材の腐食成分侵入現象については、腐食成分の濃度および翼のメタル温度との相関関係を解明することができました。

 さらにデポジットに対するメタル温度と時間の依存性データや、圧力・温度依存性データを取得するため、様々なパラメータを変化させ、試験片や実翼の暴露試験を実施しました。

設計研究

設計研究編

 1999(H11)~2001(H13)年度において、実証機建設を前提とした研究開発に主眼を置き、「概念設計」、「システムの安全性・信頼性評価研究」を実施しました。

1)概念設計

 「事前検証試験」の試験条件を決定するため、また後述する「システムの安全性・信頼性評価研究」を行なうためのプラントモデルを提供するため、プラントの概念設計を行いました。

 1999(H11)年度は、プラント全体の概略機器設計を行うことにより、実証機部品の使用条件を決定しました。また実証機で想定される課題および制約条件を個別機器毎に抽出し、それらを解決するための方法を見出すことができました。

 2000(H12)年度には、大気温度、ガス化空気比、酸素濃度等のパラメータを変化させた場合にシステム全体に与える影響度を解析し、最適な機器容量の裕度等を検討しました。またこれらの結果を反映した実証機の概略機器設計を実施しました。

2)システムの安全性・信頼性評価研究

 1999(H11)年度は、安全性・信頼性評価手法の1つであるFMEA(Failure Mode and Effect Analysis)を用い、機器毎および系統毎に、異常事象の抽出、異常事象の発生頻度、システムに及ぼす影響度およびその対策案を分析しました。その結果、機器毎の信頼性レベルや安全性レベルを把握することができました。

 2000(H12)年度には、前年度のFMEAと手法の異なる、安全性・信頼性評価手法の1つである操業偏移解析(HAZOP:Hazard and Operability Analysis)を用い、異常事象の発生要因やその影響度を推定および評価を行いました。

 また、実証機の通常負荷変化時および起動停止時における機器の運転状態の変化(動特性)をシミュレーションにより予測し、実証機の制御方法や運転方法の検討を行いました。

設備のメカニズム

設備のメカニズム

ガス化炉設備

 ガス化炉は内部の圧力が約3MPaに保たれた圧力容器となっており、その中に水冷壁で囲まれたガス化炉室があります。

 ガス化炉室はコンパスタ部とリダクタ部の二室に分かれています。この中にバーナから微粉炭と空気が吹き込まれ、ガス化炉反応が起こります。

 コンバスタ部は、微粉炭を約1,800度の高温で燃焼させ、リダクタ部におけるガス化反応に必要な高温熱源を発生させるとともに、石炭灰を溶融スラグとして排出する機能を持っています。

 リダクタ部は、コンバスタ部から上昇してくる高温ガスに微粉炭を吹き込んでガス化するとともに、ガス化の吸熱反応を利用してガス温度を低下させ、後流のSGC熱交換器での灰付着トラブルを防止する機能を持っています。

 ガス化炉内部がコンバスタ部をリダクタ部の上下二段に分けられていることから、このガス化炉の方式は「二室二段噴流床方式」と呼ばれます。二室二段噴流床方式の特長は、コンバスタ部に重点的に空気を投入して内部を高温にすることで灰の溶融を容易にしていることと、リダクタ部をガス化反応に特化させ、スムーズなガス化反応を実現しているところです。

 なお、ガス化炉内に投入された微粉炭のうち、反応しきれなかった固定炭素を含む粉体(チャー)は、チャー回収装置で捕捉して、もう一度ガス化炉に吹き込みます。チャー回収装置は、サイクロンポーラスフィルタで構成されています。

ガス精製設備

 ガス精製設備では、ガス中に含まれる硫黄化合物窒素化合物などを取り除きます。精製方式は、水洗や薬液を使用した湿式ガス精製方式を採用しています。

 硫黄化合物は、アミン溶液を用いて取り除きます。ただし、ガス化炉生成ガス中の硫黄化合物の組成は、H2S(硫化水素)、COC(硫化カルボニル)が主形態であるため、アミン溶液での吸収を可能とするよう、COS変換器内部における触媒反応によってCOSをH2Sに変換します。その後、石炭ガスをアミン水溶液にくぐらせ、H2Sを吸収します。

 H2Sを吸収したアミン溶液は、再生塔で加熱されてH2Sを拡散します。その後、H2Sは燃焼することによってSO2(二酸化硫黄)となり、SO2吸収塔で石膏はフライアッシュを含まないので、微粉炭火力において回収されるものに比べ、純度が高くなります。

 また、ハロゲン、アンモニアなどの微量成分は、ガスを水洗する段階で除去します。

複合発電設備

 複合発電設備は、発電機・蒸気タービン・ガスタービンを同軸上に配置する「一軸方式」を採用しています。まず、石炭ガスを燃焼させてガスタービンを駆動し、燃焼後のガスタービン排熱を排熱回収ボイラ(HRSG)で回収して蒸気をつくり、ガス化炉から発生する蒸気と合わせて蒸気タービンを駆動します。なお、ガスタービンと蒸気タービンの出力比は、LNGコンバインドサイクル火力が概ね2:1であるのに対し約1:1となっています。これは、ガスタービンからの排熱に加え、ガス化炉(SGC熱交換器)からの熱も利用できることから、LNG火力に比べ蒸気タービン側により多くの出力を持たせることができるためです。

 ガスタービンの空気圧縮機出口からは、ガス化炉において必要となる圧縮空気を供給するための抽気ラインが設けられており、所内動力の低減に寄与しています。燃焼器は軽質油・石炭ガスのデュアルモードに対応できるものを使用しています。

 また、脱硝装置を排熱回収ボイラに組み込み、低NOx化を図っています。

IGCC実証機の仕様

出力 250MW
石炭使用量 約1,700t/日
方式 ガス化炉 空気吹きドライフィードガス化
ガス精製 湿式ガス精製(MDEA)+石膏回収
ガスタービン 1,200度級
目標熱効率※ 発電端 48% (46%)
送電端 42% (40.5%)
環境特性
(目標値)
SOx排出濃度 8ppm (O2 16%換算)
NOx排出濃度 5ppm (O2 16%換算)
ばいじん排出濃度 4ppm (O2 16%換算)

※ 熱効率の値は低位発熱量基準(LHV)。カッコ内の数値は高位発熱量基準(HHV)。

実証計画概要

 IGCCの開発は、経済産業省の支援を得つつ、電力会社9社※、電源開発(株)および(財)電力中央研究所の計11法人が共同で推進しています。

 1986(S61)年度~1996(H8)年度は、石炭ガス化複合発電技術研究組合(IGC組合)が主体となり、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受け、福島県勿来において石炭処理量200t/日(2.5万kW相当)のパイロットプラント試験を行い、大きな成果を得ました。

 1997(H9)年度~1998(H10)年度のFSや要素研究、また1999(H11)年度~2001(H13)年度までの事前検証試験や設計研究を経て、2001(H13)年度に空気吹きIGCCの開発を目的に、9電力会社と電源開発(株)の出資のもと、(株)クリーンコールパワー研究所が設立されました。プロジェクト費用は国(経済産業省資源エネルギー庁)からの補助金(2009年度まで)と、電力会社9社、電源開発(株)および(財)電力中央研究所の11法人で分担しています。

 実証機プロジェクトのスケジュールは、2001(H13)年度~2004(H16)年度までの3年間で、実証機の詳細設計と環境影響評価を実施し、2004(H16)年度~2007(H19)年度の間に実証機を建設しました。その後、ガス化炉に点火した2007(H19)年9月~2010(H22)年度末にかけて、約4年間にわたる実証試験を実施し、IGCCの信頼性や運用性、耐久性、経済性などの検証を進め、いずれも当初の目標・指標は概ね達成することができました。

 また今後は、2011(H23)年度から2012(H24)年度末までの2年間、新たな課題への対応とIGCC技術の成熟化に向けて、主として信頼性、経済性、炭種適合性に関する検証試験をさらに進め、円滑な商用化へつなげていく計画です。

※北海道電力(株)、東北電力(株)、東京電力(株)、中部電力(株)、北陸電力(株)、関西電力(株)、中国電力(株)、四国電力(株)、九州電力(株)

実証機プロジェクトスケジュール

石炭の新しい可能性を求めて。

IGCC(石炭ガス化複合発電)開発プロジェクトの目的 地球温暖化対策のためには、風力や太陽光といった新エネルギーの導入や原子力、LNG火力発電の推進を実施していくことが重要ですが、資源の乏しいわが国においては、エネルギーセキュリティー確保のために世界において埋蔵量が豊富で価格の安定した石炭を利用した火力発電を導入し、電源のベストミックスを図ることが重要です。

 このためには、高効率な石炭火力発電技術の開発により、エネルギーセキュリティと地球温暖化対策を両立させることが不可欠であり、IGCCはこの中核技術になると考えています。

 また、IGCCは国内における石炭の利用だけでなく、海外における石炭火力の飛躍的な効率改善による温暖化ガスの大幅削減や環境性能の大幅な向上等にも役立つと考えられています。

発表論文

勿来発電所10号機(IGCC)の運転状況
小野光司,日本機械学会,2016.9

勿来発電所10号機(IGCC)の運転状況
高橋健,日本機械学会,2015.9

石炭ガス化複合発電(IGCC)の最新事情と課題
石橋喜孝,日本原子力学会,2015.5

「石炭ガス化複合発電(IGCC)商用設備の 最新運転状況、課題と今後の展開)」 (PDF 4MB)
石橋喜孝,日本計画研究所,2014.2.7

Progress in NAKOSO 250 MW Air-Blown IGCC Demonstration Project (PDF 2MB)
布川 信,International Conference on Power Engineering-2013 (ICOPE-2013),2013.10.24

The Completion of the Air-blown IGCC Demonstration Test and its Conversion to Commercial use (PDF 0.5MB)
石橋喜孝,World Energy Council,2013.10

「石炭ガス化複合発電(IGCC)実証機の実証試験終了と商用転用 (PDF 0.8MB)
石橋喜孝,エネルギーと動力 2013春季号

実証機時のIGCCの発表論文・技術資料についてはコチラ

2014(平成26)年度

4月 空気吹きIGCC 2013年度日本機械学会賞(技術)受賞

 東京都港区の明治記念館において,2013年度日本機械学会賞授賞式が執り行われ,当社の「高効率空気吹きIGCCの開発」が,2013年度日本機械学会賞(技術)を受賞しました。

2013(平成25)年度

12月 IGCC設備における世界最長連続運転記録3,917時間を樹立

 10号機は,2013(平成25)年6月28日より石炭ガス化運転をスタートさせ,同年12月8日20時に停止し,中間点検に入りました。 この間の連続運転時間は3,917時間であり,これまでオランダのブフナム発電所が持っていた世界記録3,287時間を大幅に更新しました。


11月 IGCC設備における世界最長連続運転記録を更新

 10号機は,日本初のIGCC商用機として2013(平成25)年6月28日より石炭ガス化運転を開始し,その後順調に運転を続け,同年11月12日13時35分をもってIGCC設備における世界最長連続運転記録3,287時間(オランダブフナム発電所)を更新しました。


6月 10号機 営業運転開始

 10号機は,2013(平成25)年3月4日から定期事業者検査で停止しておりましたが,同年6月30日17時に営業運転を開始しました。


4月 IGCC実証機を10号機として商用機に転用

 当社は,2013(平成25)年4月1日付で株式会社クリーンコールパワー研究所を吸収合併しました。 同社の石炭ガス化複合発電設備は10号機(IGCC・定格出力25万kW)として商用機に転用し,運転を継続することとなりました。

用 語 意 味
アミン 石炭ガス中の硫黄化合物を吸収して石炭ガスから取り除く役割をしているガス精製用の薬液のこと。
亜瀝(れき)青炭 日本における石炭火力発電用の燃料として利用はあまり進んでいないものの、瀝青炭に比べ価格的に有利で埋蔵量も豊富なことからIGCCでの利用が検討されている。石炭中の炭素の含有量や発熱量も瀝青炭より低い。
硫黄回収設備 オフガス燃焼炉にて硫黄分を硫黄酸化物にした後、石灰石スラリーを用いて硫黄酸化物を吸収し、石膏として回収する設備。
硫黄化合物 石炭中の硫黄が燃焼することにより生成する硫化水素(H2S)や硫化カルボニル(COS)等の硫黄を含む化合物のこと。
ガス化炉 微粉炭をガス化するための反応炉
ガスタービン燃料切替 プラント起動時、ガス化炉で石炭ガスが発生するまでは灯油を燃料としてガスタービンを運転する必要がある。石炭ガス発生後にガスタービンの燃料を灯油から石炭ガス(停止時は石炭ガスから灯油)へ切替を行うこと。
(チャー回収装置)
サイクロン
遠心力を利用し、石炭ガス中の粗粒チャーを回収する設備。
所内動力 ポンプやファン等のプラント設備を動かすために必要な動力のこと。
スラグ 石炭中の灰分が、高温のガス化炉で溶け、ガス化炉下部の水中に流れ落ちて急冷されることでガラス状に固まり、粒状で排出されるもの。
石炭ガス化反応 石炭を熱し揮発分ガスと固体分のチャーに分解した後、チャーが二酸化炭素(CO2)や水(H2O)等と反応し、一酸化炭素(CO)や水素(H2)等のガスに変換される一連の反応のこと。
送電端効率 プラントに供給した石炭のエネルギーのうち、どれだけ電力に変わるかを示す指標を効率というが、プラントで発電した電力からプラントを運転するために必要な電力を差し引いた送電端電力の効率を示すもの。
脱硝装置 ガスタービン排ガス中の窒素酸化物を取り除くため、アンモニアや触媒を用いて窒素酸化物を窒素(N2)と水(H2O)に分解する装置。
窒素化合物 石炭や燃焼用空気に含まれる窒素分が燃焼することにより生成するアンモニア(NH3)等の窒素を含む化合物のこと。
チャー ガス化炉中において、石炭から揮発分や水分を除いて得られる未反応固形物で主に灰分と固定炭素から成るもの。
デュアルモード ガスタービンの燃料として通常は石炭ガスを使用するが、プラント起動・停止の際は灯油を使用するといった2種類の燃料が使用できること。
ハロゲン フッ素(F)や塩素(Cl)等の元素を指し、このプラントではフッ化水素(HF)や塩化水素(HCI)等の形で石炭ガス中に存在するもの。
フライアッシュ 従来の微粉炭火力のボイラで燃焼により発生するもので石炭中の灰分が粉状となったもの。
(チャー回収装置)
ポーラスフィルタ
サイクロンの後流側にあり、フィルタを用いて石炭ガス中の微細チャーを回収する設備。
瀝(れき)青炭 日本における石炭火力発電用の燃料としてよく用いられるもの。石炭中の炭素の含有量が無煙炭に次いで高く、発熱量は亜瀝青炭より高い。
ASU 空気分離設備(Air Separation Unit )のことで、IGCCでは微粉炭を安全に搬送する等の目的で窒素を使用するため、大気中の空気から窒素(N2)や酸素(O2)を分離する設備。
LHV 低位発熱量(Lower Heating Value)のことで、燃料が燃焼したときに発生するエネルギーを表示する際に、燃料中の水分および燃焼によって生成された水蒸気の蒸発潜熱(凝縮熱)を除いたもの。 水蒸気の蒸発潜熱(凝縮熱)を含むのが高位発熱量(HHV:Higher Heating Value)という。
SGC熱交換器 シンガスクーラーと呼ばれ、ガス化炉で発生した石炭ガスの熱を利用して、蒸気タービンを駆動するための蒸気を発生させる設備。

メリット1 発電効率の向上と地球温暖化対策

 固体の石炭をガス化することで蒸気タービンにガスタービンを組み合わせた発電ができるため、従来の石炭火力の発電効率約42%に対して商用段階IGCCでは48~50%の発電効率が見込まれます。

 これにより石油火力とほぼ同等のCO2排出量で石炭利用発電が可能となります。

 
メリット1 発電効率の向上と地球温暖化対策

メリット2 利用炭種の拡大

 資源量が最も豊富な石炭の利用技術であり、従来の石炭火力では利用が困難な灰融点の低い石炭も適合するため、利用炭種の拡大が可能となります。

 
利用炭種の拡大

メリット3 大気環境特性

 固体の石炭をガス化することで蒸気タービンにガスタービンを組み合わせた発電ができるため、従来の石炭火力の発電効率約42%に対して商用段階のIGCCでは48~50%の発電効率が見込まれます。

 システムの高効率化により、発電電力量(kWh)あたりのSOx、NOx、ばいじんの排出量が低減できます。

 
pic_meritto_03

メリット4 スラグの有効利用

 従来型石炭火力では、多量の石炭灰が発生しますが、IGCCではガラス状のスラグとして排出されるため容積がほぼ半減できます。

 またスラグは、セメントの原材料や路盤材等としてリサイクルが可能です。

 
pic_meritto_04

メリット5 その他特性

温排水の低減

 IGCCはガスタービンを用いたコンバインドサイクル発電なので従来の石炭火力に比較して温排水量を約3割低減できます。

用水使用量の低減

 従来の石炭火力の排煙脱硫装置は、燃料を燃やした後の排ガス段階でばい煙処理を行うので、多量の用水が必要でしたが、IGCCは燃料ガス段階で処理を行うので用水使用量を大幅に低減できます。

IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle)石炭ガス化複合発電

 IGCCは、石炭をガス化し、C/C(コンバインドサイクル発電)と組合わせることにより、従来型石炭火力に比べ更なる高効率化を目指した発電システムです。

従来型石炭火力  pic_about_coal
<機器構成>
ボイラ+蒸気タービン
ボイラ内で石炭を燃焼し蒸気を発生させます。この蒸気の膨張力により蒸気タービンを回転し、直結した発電機を回します。
C/C発電(コンバインドサイクル発電)  pic_about_cycle
<機器構成>
ボイラ+蒸気タービン+ガスタービン
圧縮した空気の中で燃料を燃やして燃焼ガスを発生させます。このガスの膨張力によりガスタービンを回転し、直結した発電機を回します。さらに高温の排ガスをボイラに導いて蒸気を発生させ、蒸気タービンを回します。
IGCC(石炭ガス化複合発電)  pic_about_coal-gas
<機器構成>
ボイラ+蒸気タービン+ガスタービンガス化炉
ガス化炉内で石炭をガス化し、燃料ガスを発生させます。この燃料ガスをガスタービンに導き、燃焼させることにより、ガスタービンを回します。さらに高温の排ガスをボイラに導いて蒸気を発生させ、蒸気タービンを回します。

IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle)石炭ガス化複合発電

 10号機は、空気吹き石炭ガス化複合発電方式を採用し、(株)クリーンコールパワー研究所(CCP)が、実証機による運転試験を2007(平成19)年9月から2013(平成25)年3月まで行い、同年4月から当社が設備を引き継ぎ商用設備として運転をしています。

 また、2013(平成25)年6月28日より石炭ガス化運転をスタートさせ、12月8日20時に停止し、中間点検を行いました。この間の連続運転時間は3,917時間であり、これまでのオランダのブフナム発電所が持っていた世界記録3,287時間を大幅に更新いたしました。

IGCCのしくみ

 IGCCは、石炭をガス化し、C/C(コンバインドサイクル発電)と組合せることにより、従来型石炭火力に比べ更なる高効率化を目指した発電システムです。

10号機仕様

出 力 25万kW
石炭使用量 約1,700t/日
方 式 ガス化炉 空気吹きドライフィード方式
ガス精製 湿式ガス精製(MDEA)+石膏回収
ガスタービン 1,200℃級
設計熱効率※ 発電端 48%(46%)
送電端 42%(40.5%)

※熱効率は低位発熱量(LHV)基準。カッコ内は高位発熱量(HHV)基準