2008(平成20)年度実証試験状況について

 | English

IGCC(石炭ガス化複合発電)

 平成20年3月に250MW定格出力運転を達成し、6月10日からは、IGCC(石炭ガス化複合発電)開発の最大の山場と考えておりました長時間連続運転へのチャレンジを開始し、9月17日に、累積連続運転2039時間を達成することができました。これは、所期の目的であった「電力の需要の高い夏場において、3ヶ月ノンストップで連続運転できる信頼性」を立証できた事を意味するものであり、IGCCの商用化に向けて大きく前進したものと考えております。

2000時間連続運転達成の瞬間

【石炭ガス化調整試験(RUN-7)】

  • <試験目的>
  • ・負荷変化試験を実施し、設備の追従性、制御性を確認する。
  • ・性能試験を実施し、プラント効率、環境特性を確認する。
  • <試験結果>
  • ・負荷上昇、負荷降下を安定して行うことを確認することができた。
  • ・SOx、NOx、ばいじん濃度、排ガス量の環境目標値をクリアした。

【健全性確認試験(RUN-8)】

  • <試験目的>
  • ・2000時間連続運転試験(RUN-9)前に実施した設備改造箇所の健全性を確認する。
  • <試験結果>
  • ・改造箇所の健全性と、プラント安定運転を確認することができた。

【2000時間連続運転試験および運転最適化試験(1)(RUN-9)】

  • <試験目的>
  • ・2000時間連続運転を確認する。
  • ・プラント効率向上、運用性向上のための確認試験を実施する。
  • <試験結果>
  • ・累積連続運転2039時間の運転で設備の信頼性を確認することができた。
  • ・運転最適化試験(2)に向けた基礎データを取得することができた。

【運転最適化試験(2)および炭種変化試験(RUN-10)】

  • <試験目的>
  • ・プラント効率向上、運用性向上のための確認試験を実施し、プラント効率を確認する。
  • ・設計炭以外の石炭による運転を確認する。
  • <試験結果>
  • ・目標送電端効率(LHV)42%以上を確認した。また設計炭以外の石炭による運転が可能であることを確認することができた。

 平成19年9月20日のガス化炉点火によりIGCC実証機の建設工事が終了し、実証試験を開始しました。

 平成19年12月上旬に石炭ガスをガスタービンに初めて投入いたしました。以後12月下旬にプラント負荷50%到達、平成20年1月上旬にプラント負荷75%到達と順調に試験は進捗し、3月7日には、プラント負荷100%(250MW)到達となりました(下記・写真)。

080401
 平成19年度における各主要設備の運転状況は以下のとおりです。

(1) ガス化炉設備

【9月】 9月20日のガス化炉点火以降、ガス化炉への石炭投入に先立ち、石炭ガス化反応に必要な温度まで灯油にてガス化炉の温度を上昇させる必要があることから、灯油を燃焼した状態でガス化炉を昇温・昇圧し、灯油燃焼ガスでの安定運転を確認しました。
【10月】 ガス化炉燃料の灯油から石炭への切替試験を実施し、ガス化炉の運転状態およびスラグの排出性が計画通りであることを確認しました。
【11月】 ガス化炉運転の制御性の確認を実施しました。
【12月~3月】 石炭ガスの圧力制御を実施し良好な制御性を確認しました。
また、ガス化炉とガスタービンの協調制御運転を行い、安定した運転ができることを確認しました。

(2) ガス精製設備

【9月】 ガス化炉にて発生した灯油ガスの通ガスを実施しました。
【10月】 中旬より石炭ガスの通ガスを開始しました。また、下旬よりアミン(ガス精製用の薬液)再生を開始しました。
【11月】 石炭ガスから回収した硫黄分を燃焼させるオフガス燃焼炉運転の燃焼状態の確認、その後硫黄回収設備調整運転を実施し、良好な運転結果を得ました。
【12月~3月】 各負荷において、石炭ガス系統が安定して運転できることを確認しました。

(3) 複合発電設備

【9月】 ガスタービン25%負荷(灯油焚き)での総合インターロック試験を実施しました。
【10月】 負荷運転調整を行いました。
【11月】 中旬にタービンの急速停止を実施し、良好な試験結果を得ました。また、下旬に石炭ガス投入に向けた燃料ガス管パージ(ガスタービンに石炭ガスを投入する前に燃料配管内の空気を窒素で置換すること)確認を実施しました。
【12月~3月】 ガスタービンの燃料切替(灯油⇔石炭ガス)が問題なく実施できることを確認するとともに、各負荷において燃焼状態の調整を行い、良好な燃焼性を得ました。蒸気タービンについても、ガスタービン燃料切替や負荷変動による主蒸気温度への影響は緩やかであり、問題なく運転できることを確認しました。
また、石炭ガス焚き時の総合インターロック試験を実施し、各設備が安全に停止できることを確認しました。

IGCCプロジェクトは、現在、世界各国でも積極的に進められています。

IGCC先行機

プロジェクト名
運営会社
(国)
ガス化炉
(方式)
GT 発電端出力
(MW)
運転開始
年月
連続運転
(時間)※
備 考
Buggenum
Nuon(Vattenfall)
(オランダ)
Shell
(酸素吹き)
Siemens
V94.2
284 1994年1月 3,287
Wabash River
Wabash Valley Power
(米国(インディアナ州))
E-Gas(Dow)
(酸素吹き)
GE
7FA
296 1995年8月 1,848
Polk Power
Tampa Electric
(米国(フロリダ州))
GE(Texaco)
(酸素吹き)
GE
7FA
315 1996年7月 1,673
Puertollano
ELCOGAS
(スペイン)
Prenflo
(酸素吹き)
Siemens
V94.3
318 1997年11月 954
IGCC実証機
クリーンコールパワー研究所
(日本(福島県))
MHI
(空気吹き)
MHI
701DA
250 2013年7月 3,917 2013年4月
常磐共同火力10号機として商用転用

※ ガス化ガス運転時間のみ

発表論文

Progress in Japanese Air-blown IGCC Demonstration Project Update (PDF 2MB)
浅野哲司,Coal Gasification Sympsium,平成24年4月26日

Brief Introduction on Nakoso IGCC Demonstration plant Technology and its test results (PDF 878KB)
渡辺勉,インド2012年エネルギー会議,平成24年1月23日

日本的250MW空气吹入IGCC实证项目的进展情况 (PDF 1.3MB)
石橋喜孝ほか,クリーン高効率石炭火力技術2011年会,平成23年10月13日

Clean Coal Demonstration Plant Of 250MW Air-Blown IGCC in Japan (PDF 1.5MB)
T.watanabe et al., GAP&Coal Chemicals Conference,China Beijing, June 8, 2011

Results and estimations of the 5,000 Hour Durability Test at the Nakoso Air Blown IGCC plant (including other activities) (PDF 908KB)
T.watanabe et al., Gasification Technologies Conference 2010, Washington, D.C,November 3, 2010

Japanese Air Blown IGCC Project Progress (PDF 848KB)
T.watanabe et al., IGCC Outlook china 2010, Shanghai, April 15, 2010

Clean coal technology required for the future and development of IGCC technology.  (PDF 1.16MB)
T.watanabe et al., International Electric Research Exchange ,Romania, November 10, 2009

Second Year Operation Results of CCP’s Nakoso 250MW Air-blown IGCC Demonstration Plant (PDF 387KB)
Y.Ishibashi et al., Gasification Technologes Council 2009,Cororado,Oct.2009

「石炭ガス化複合発電(IGCC)の開発について」 (PDF 2.39MB)
(社)日本ガスタービン学会 第37回ガスタービンセミナー 2009.1

「石炭ガス化複合発電(IGCC)実証プラントの開発」 (PDF 8.69MB)
(社)日本ガスタービン学会誌 Vol37 No2 2009.3

Project Status of 250MW Air-blown IGCC Demonstration Plant (PDF 209KB)
S.Kaneko et al., Gasification Technology 2001, San Francisco, Oct. 2001

ガス化複合サイクル発電 (PDF 209KB)
橋ほか, 火力原子力発電, vol.52, No.541(2001)

技術資料

石炭ガス化複合発電(IGCC)実証プラント開発の動向 (PDF 334KB)
CCP研究所2001年7月,CCP研究所

資源・エネルギー技術評価検討会

噴流床石炭ガス化発電プラント実証」プロジェクト評価(中間)報告書 (PDF 3.04MB)
産業構造審議会産業技術分科会 評価小委員会,2008年4月

「噴流床石炭ガス化発電プラント実証」評価用資料 (PDF 1.43MB)
経済産業省資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 電力基盤整備課,2008年1月

「噴流床石炭ガス化発電プラント実証」に関する評価報告書 (PDF 127KB)
資源・エネルギー技術評価検討会,2000年7月

「噴流床石炭ガス化発電プラント実証」説明資料 (PDF 500KB)
通商産業省 資源エネルギー庁公益事業部 電力技術課,2000年3月

実証試験結果(詳細):平成22年度まで

1) システムの安定性:「石炭ガス化調整試験」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
・プラント異常時における安全停止

インターロック試験を実施し、プラントが安全に停止することを確認


実施時期:2007(H19)年度
状況   :完了

  • ・プラント異常を模擬して安全に停止することをインターロック試験により確認
  • <試験項目(抜粋)>
  • ・灯油炊き時の総合インターロック試験
  • ・石炭ガス焚き時の総合インターロック試験
システムの安定性を確認目標達成
・石炭ガスの安全なハンドリング

プラント運転状態の確認や調整を行うことで、石炭ガスの安全なハンドリングと定格負荷での安定運転を確認


実施時期:2007(H19)年度
状況   :完了

  • ・各種試験や調整を行うことで、石炭ガスの安全なハンドリングと運転状態に異常が無いことを確認
  • ・定格負荷250MWにおける継続的な安定運転によるシステムの安定性を確認
  • <試験項目(抜粋)>
  • ガス化炉
  • ・ガス化炉燃料切替試験(灯油→石炭)
  • ・ガス化炉運転制御性確認
  • ・ガス化炉とガスタービンの協調制御運転
  • ガス精製設備
  • ・灯油ガス/石炭ガスの通ガス確認
  • ・オフガス燃焼炉運転確認
  • ・硫黄回収設備調整運転
  • 複合発電設備
  • ・タービン急速停止
  • ・燃料ガス管パージ確認
  • ・ガスタービン燃料切替(灯油→石炭ガス)
  • ・ガスタービン燃焼調整
  • ・蒸気タービン運転状態確認

2) 設備の信頼性:「2000時間連続運転試験」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
・2000時間の連続運転
(夏季3ヶ月間相当)

2000時間連続運転を実施


実施時期:2008(H20)年度
状況   :完了

  • ・平成20年6月10日~9月17日の間で2000時間連続運転 試験を実施
  • ・途中ASUのバルブ損傷に伴いプラントを停止したが、バルブ修理後プラントを速やかに起動して累積連続運転2039時間を確認し、その後点検のためプラントを計画停止
連続運転の目標は達成したが、今後も継続して中長期的な耐久性等の検証をしていく目標達成

3) 炭種適合性:「炭種変化試験」「炭種適合性拡大試験」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
・設計炭以外の複数の炭種を用いた運転とデータ取得

亜瀝青炭(北米炭、インドネシア炭A)を用いた運転状態を確認


実施時期:2008(H20)年度
状況   :完了

  • ・部分負荷ではあったが、運転パラメータの調整を実施することで亜瀝青炭2炭種(北米炭、インドネシア炭A)を専焼できることを確認し、運転状態のプラント特性データを取得
  • ・炭種性状によりガス化炉後流にある熱交換器伝熱管に詰まりが発生する場合有り

設計炭以外の3炭種の運転状況を分析し、商用機設計に資するデータを取得

ガス化炉後流熱交換器(SGC)伝熱管に詰まりが発生する場合がある

炭種性状に応じてトラブルの発生防止など様々な対応が必要なことが判明

目標達成

亜瀝青炭(北米炭)を用いた運転状態を確認


実施時期:2009(H21)年度
状況   :完了

  • ・運転パラメータを変更し、再調整を行うことで亜瀝青炭(北米炭)を用いたプラント運転状態を確認
  • ・炭種性状によりガス化炉後流にある熱交換器伝熱管に詰まりが発生する場合有り

設計炭以外の主力炭種拡大や専焼可能な亜瀝青炭拡大を目的とした運転を実施


実施時期:2010(H22)年度
状況   :完了

  • ・運転パラメータを変更し、再調整を行うことで亜瀝青炭(インドネシア炭B)を用いたプラント運転状態を確認

4) 高効率性:「運転最適化試験」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・目標熱効率
    (送電端効率:LHV42%)の達成

効率検証、ならびに商用機にて効率向上が期待可能な項目を検証


実施時期:2008(H20)年度
状況   :完了

運転パラメーターを調整することにより送電端効率目標42%(LHV)に対して42.9%(LHV)を確認 高効率性を確認目標達成

5) 耐久性:「耐久性確認試験」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・長時間運転とその後の開放点検

延べ5000時間運転を実施し、その後の開放点検を行うことにより耐久性を評価


実施時期:2009(H21)年度
2010(H22)年度
状況   :完了

  • ・年間で延べ5000時間運転到達
  • ・5000時間耐久性確認試験後の設備点検をしたところ、大規模な設備改造を要する様な致命的な機器損傷は無く、実証設備のIGCC構成が妥当であることを確認
実証設備のIGCC構成が妥当であることを確認したが、今後も継続して中長期的な耐久性等の検証をしていく 目標達成

6) 経済性:「経済性評価」

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・運転実績に基づく経済性の評価

運転実績に基づいて、商用機における建設費・運転費・保守費等を総合的に評価し、経済性を評価


実施時期:2010(H22)年度
状況   :完了

  • ・建設費や修繕費は微粉炭火力よりも高いと想定されるが、熱効率の向上や燃料調達費の低減が見込まれる
発電原価として微粉炭火力と同等以下となる見通しは得られる可能性あり。但し修繕費については、コスト低減に向けて今後の精度向上が望まれる目標達成

実証試験結果(詳細):平成23年度以降

1) 信頼性

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・試験中に実施した対策についての中長期的な耐久性などの検証

既に実施の設備トラブル対策について耐久など長期的な検証を行う
更に運転をすることで中長期的に発生しうる設備トラブルの未然防止をはかるため設備点検や経年劣化評価を行う


実施時期:2011(H23)年度
状況   :完了

  • ・初期トラブルについては運転試験や定検工事、休転工事において対策箇所の確認を実施。SGC差圧上昇やHRSG発錆以外は現在まで大きな問題なし
  • ・中長期的に発生したトラブルとして平成23年度は2件の対策を実施。今度対策箇所の検証を実施予定
・初期トラブル対策について、中長期的な耐久性などの検証を行い、ほぼ問題ないことを確認
・新たに発生したトラブルについても、設備トラブル対策の検証を実施目標達成

さらに運転実績を重ねて中長期的な耐久性の検証を行う


実施時期:2012(H24)年度
状況   :完了

  • ・初期トラブルについては昨年度同様に運転試験や休転工事において対策箇所の確認を実施。高頻度作動弁の損傷が確認されたが、材質変更を行い、運転試験を通じて耐久性の確認を実施。その他は特に大きな問題なし。
  • ・中長期的に発生した新たなトラブルとして平成24年度は2件の対策を実施。年度末点検にて対策箇所の検証を実施。

2) 炭種適合性

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・炭種性状に応じたトラブル発生防止方策の確立

瀝青炭(コロンビア炭、ロシア炭、インドネシア炭)を用いた運転状態を確認


実施時期:2011(H23)年度
状況   :完了

  • ・運転パラメータを変更し、再調整を行うことで瀝青炭(コロンビア炭、ロシア炭、インドネシア炭)を用いたプラント運転状態を確認
  • ・炭種性状によりガス化炉後流にある熱交換器伝熱管に詰まりが発生する場合有り
・設計炭以外の5炭種について、運転パラメータ調整による運転状態を確認し、炭種ごとの運転最適化を図った
・熱交換器伝熱管詰まりについては設備面や運用面での対応による対策の効果を確認した 目標達成

亜瀝青炭(米国炭)や瀝青炭(カナダ炭)を用いた運転状態を確認


実施時期:2012(H24)年度
状況   :完了

  • ・運転パラメータを変更し、再調整を行うことで亜瀝青炭(米国炭)、瀝青炭(カナダ炭)を用いたプラント運転状態を確認
  • ・ガス化炉後流の熱交換器伝熱管詰まりは、伝熱管の一部改造による設備面での対応や高圧除煤装置等の運用面での対応により、SGC伝熱管詰まり対策の効果を確認した

3) 経済性

検証内容(概要) 実証試験内容 実証試験結果(概要) 評 価
  • ・設備点検のサンプル数を増加させつつ、微粉炭火力並みのコスト実現に向けての検討

運転実績・点検実績に基づいて、商用機における建設費・運転費・保守費等を低減させるための検討を行う


実施時期:2011(H23)年度
状況   :完了

  • ・ガス化炉後流にある熱交換器の容積低減を図る方策を検討
  • ・点検周期の延伸化について見直しを検討
・熱交換器容積低減方策が問題ないことを確認し、設備の容積低減が可能となる見通しを得た
・設備点検、運転試験、設備トラブルを通じて、点検周期や点検範囲の精度向上を図った 目標達成

さらに運転実績・点検実績を重ねて費用低減に関する検討を行う


実施時期:2012(H24)年度
状況   :完了

  • ・ガス化炉後流にある熱交換器の容積低減方策を一部実施し、伝熱性能に問題ないことを確認
  • ・点検周期の延伸化について引き続き見直しを検討

次へ →